ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ロマン(ss)



大きな取引を終え、角都のアタッシュケースがほぼ空になった。軽くなったそれを持たせてもらった飛段は、ケースを肩に担ぎ、いかにも与太者らしくあたりを睥睨しながら街中を歩いた。あんな実用一点張りのカバンを持ちたがるとは、と角都は思うが、飛段はご満悦で、休憩時には膝の上に乗せたケースをもっともらしく開いてみたりしている。一度など勢いよく開いたケースからジャムパンが飛び出してしまい、あわてて拾うはめになったが、それでもケースを手放さない。とても格好のいいアイテムを手にした喜びで常にうっすらと笑っている。そして相棒を真似たつもりで、架空の誰かをやっつけるべくケースを宙に振り上げたりするのである。