ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

どんなものにも美点がある(ss)



厄介な追っ手に手を焼いていた角都は、道中で偶然知人に出会い、身を隠すのに好都合と考えて誘われるままついて行った。もともと変わり者だった知人の男は年月を経てさらに偏屈になっており、世間を良いものと悪いものに分けようとしていた。能力の低い奴らはクズだ、女は能力が低いからクズだ、誰々はそれに賛同しないからクズだ、あの里の奴らはみんなクズだ、この里の奴らも半分はクズだ、貧乏人はクズだ、病人はクズだ、弱い奴らはクズだ、女は弱いからクズだ。女を重ねて否定するのは未練が一番深いからだろう。ゴミだらけの室内は暗く、座卓も座布団もべたついており、抜け毛がそこらじゅうにへばりついていた。角都は黙って座っていた。夜が更けて角都が発とうとすると、男は急に愛想がよくなり、いろいろと金目の情報をちらつかせて客を引き留めようとしたが、その間もひっきりなしに世界をけなし続けるのだった。金持ちはクズだ、女は金持ちを好むからクズだ、同性愛者はクズだ、女の同性愛者はもっとクズだ。角都は少し迷ったが、結局は相手を殺すことなく出立した。他者と折り合えない者の家は隠れ家にうってつけだったからだ。