ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

自罰(ss)



暗がりの中でさらに黒々とした巨木が熱風に枝をしならせる。怒る角都に飛段は言い返すが、その言葉は威勢がいいだけで中身がなく、強い風に簡単に吹き散らされる。生き残った奴なんかいやしねーよ、まったくジジイは心配性で困るぜ。討ち漏らしたやつがいないと本当に言い切れるか?貴様がばらした情報を万一誰かが持ち帰ってみろ、誰も俺たちを信用しなくなるぞ。角都の声はざらつくほど低い。殴ってこないということは本気で怒っているのだろう。短気な男のこと、ここで問題のけりをつけるつもりなのかもしれない。そうして飛段の存在を自分にとって取り除くべきデメリットと考えているのかもしれない。他人にどう思われようと気にすることのない飛段だが、相棒に捨てられるのはいやだった。うっかり口を滑らせたんだ、悪かった、今後は気をつける、と言ってみたらどうだろう。だが不用意な言葉は取り戻せず、謝ったところで問題はなくならず、そうこうしている間に角都が案ずる彼の「信用」は現に損なわれつつあるのかもしれなかった。不要な時に出てきて大事な時に役に立たない言葉などいらない。飛段は唾を飲み込むと、舌を上下の歯で挟み、ぶちぶちと歯切れ悪く噛み切った。二人とも黙りこんだままだったので、闇の中の真黒な影でしかない角都がそれに気づいたかどうかはわからなかった。