ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

新年7(ss)

皆さま、あけましておめでとうございます。
昨年中は、管理者の部屋掃除並みの頻度でしか更新しないハキダメにお越しくださり、本当にありがとうございました。
本年もダメダメぶりをさらすことになると思いますが、今まで同様、お気が向かれたときにお立ち寄りいただければ幸いに存じます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。



あてにしていた仕事がフイになった。依頼主が相手方と和解したという。遠路はるばるやってきたというのに申し訳のような足代をあてがわれて不機嫌になっている角都の隣で阿呆な相棒が、仕事なくなったのかやりィ!と喜んでいる。まだ日はあったが天候は崩れつつあり小雪が飛んでいる。いい加減くたびれてもいた角都は海沿いのこの町で一泊することにする。宿に泊まるのかやりィ!と阿呆な相棒がまた喜ぶ。質素な部屋には大きく窓が切ってあり、しんしんと冷えている。宿主に火鉢を頼む角都を飛段が笑う。変な野郎だなァ、野宿は平気なくせに部屋が寒いのは嫌なのか。金を払っているからな、と角都は短く答える。本当なら儲けた金で良い宿に泊まり贅沢な正月をするはずだったのに、部屋はこのありさまで窓から見えるのは灰色の海と空。火鉢のそばに座って新年早々ついてないとぼやく角都に、隣にしゃがんだ飛段が、んじゃオレのツキを分けてやるよ、と言い、覆面の上から相棒の右頬へチュッと音を立てて唇をぶつけてくる。くだらん、と角都は吐き捨てるが眉間のしわは少し薄くなる。と、飛段が丸めたティッシュを炭に乗せて燃やし始める。何だそれは。んー、ゆうべ出しおさめした子種。お前はバカか、というか昨夜そんなことしてたのか。だってよォあの寒さじゃやる感じじゃねーし、でもたまっちまったもんはしょうがねーし、だからコートん中でよォ。お前はバカか、と角都は繰り返すが、その声はずいぶん和らいでいる。ジジッと音を立てて燃えるティッシュに二人は手をかざし、大きな窓から外を眺める。寒風の吹く灰色の空遠く、点滅する白い棒のようにカモメの群れが飛んでいく。