ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

おめでたい新年(ss)



高額の仕事を請け負いに行き、そのまま依頼主の新年会へ招かれた。二日後には殺される予定の者たちが礼儀正しく話しかけてくる。誰も大声など出さず、下品なことも言わず、言葉の裏に棘をひそませ、わかりにくく自慢をし、こちらの身分や懐具合を言葉巧みに聞き出そうとする。適当に流しながら会話をし、頃合いを見て辞去すると、外は良い天気である。こんな日に空気の淀んだ室内にいたことを考えると何だか損をしたような気がした。神経を使うくせに得るもののない社交をするより、阿呆な相棒の相手をする方がマシだろう。そう思って宿に戻ると件の相棒はまだ寝こけている。自分がひと働きしている間、こいつはよだれを垂らして眠っていたのだ。音を立ててカーテンを開き布団の上から蹴りつけるとさすがに起きるが、眠そうな間抜け面がまた腹立たしい。苛立つ俺の前で相棒はあくびをして立ち上がり、全裸のままでトイレに入るとドアを開けたまま放尿を始めた。じょぼじょぼ、と言う音がいつまでも続き、それに合わせるように相棒が歌いだす。あーたーらしーいーあーさがきた、きーぼーおのーあーさーだ。カリカリしながら、何を歌っているんだ、と聞くと、お正月のうたー、と間延びした声が返ってくる。違う!と俺はわめいて部屋を出、ドアを叩きつけて閉める。俺は間違っていた。小利口な奴らよりバカの方がマシなんてことはない。どっちもクソだ。