ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

寒さ(ss)



低い雲からときおり雨がぽつりぽつりと落ちてくる。さほどではないが風もある。地平線に黒々と貼りついた森まで枯れた芦原が広がる。見えるものはすべて灰色の濃淡で、隣の相棒が背負う赤い鎌すら黒ずんで見える。その相棒が何か言った。こないだここでしんだやつ、ずいぶんとおくまでくびがとんでいったんで、なんかわらえたよな。意味がわからず、ここを通るのは初めてだぞと返したが、相棒は要領を得ない顔で俺を見るだけだ。言葉を聞き違えたのかもしれない。そう思ったとき、道端の泥がむくむくと人の形となり、武器をひらめかせながらこちらへ突進してきた。相棒は身を低くしてそれを避け、そのまま鎌を振りぬいた。刎ねられた首が、どういう力の加減かはるかかなたまで飛んでいく。相棒がけたたましく笑い出す。なんだぁあいつがしぬのきょうだっけか、げははは。また俺は聞き違えているのだろうか。あてにならない耳を補おうと目を凝らすが、空も景色も相棒も、足元に転がる体から噴きだす血もやはり灰色。