ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

心配していた俺の時間を返せ(ss)



その日の飛段は戦闘相手への攻撃を何度も外し、角都から大目玉をくらったが、怒られている最中にもぼんやりするなどどうも様子がおかしかった。街中で買い求めた肉の串焼きを飛段が残したことで角都は初めて不安になり、まだ日が沈まぬうちに宿を取って休息することにした。だが肝心の飛段は大して喜びもせず、部屋に入るなりぺたりと床に座り、壁に寄りかかって静かにしている。熱を測ろうとする角都をうるさがることもない。風呂へ入るように促すとのっそり従う。反応の鈍さに角都は戸惑い一人で頭を抱える。病か、毒か、術か、それとも昼間殴りすぎたのか。どうしたのか、どうすればいいのか。何の策も思い浮かばないうちに、湯上りの肌から熱を立ちのぼらせて飛段が戻ってくる。がさつで活きの良いいつもの状態で。そして、安堵のあまり笑みさえ浮かべる角都に向かって、今日パンツ後ろ前に穿いちゃってたぜ、と朗らかに報告する。なんか調子出ねえとは思ったんだけどよォ、パンツ後ろ前じゃあポジション定まんないもんなァ、いやー参った参った、今日一日を最初っからやり直してえぜ。ああ、と低く返す角都。笑みが消えてへの字に歪んだ唇から言葉とともに地怨虞があふれ出してくる。そうだな、では、とりあえず貴様のしくじりの仕置きからやり直すとするか。