ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

悪人ども(ss)



久しぶりに立ち寄った換金所の主がいつの間にか妻帯していた。それを礼儀と勘違いしている飛段が二人を冷やかしたが、女は無表情のまま死体の引取り書を作り、何も言わずに部屋を出て行った。借金のカタにもらってやったのさ、と主が言う。飽きたら売り飛ばしてまた別なのをもらうつもりだ、ひひひ。換金所を後にした角都と飛段は、互いに、あの夫婦は別れないだろうと言いあう。別れるつもりの女に指輪を、しかも自分と揃いのものを買うわけがないからな。だいたい売り飛ばすってったってあんな女誰も買わないぜ、でも売れなきゃ別なのもらう気ねえんだろ。その翌年、またその換金所へ来た二人は、目つき鋭く貫録も増した妻に死体を引き渡し、金の支払いを受ける。以前は腹を出っぱらせ二重あごに埋もれていた男は、車椅子にちんまりとおさまり、白濁した目をしばたたいている。自業自得なんだよ、と換金所の主である女が言う。飲み屋で喧嘩してこのザマさ、しぼり取れるだけしぼ り取ったら放り出してやる、酒だって二度と飲ませてやるもんか。換金所を出た角都と飛段は、もう奴からしぼり取れるものはなかろうに、あれで酒までやめたらえらく長生きするだろうぜ、と以前交わしたような会話を交わす。女の腹が大きかったこともネタにする。二人の子もせいぜい悪く育つことだろう。