ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

くそったれ(ss)



移動の最中、腹具合がおかしくなってきた。我慢しているとマシになるが、またギュルギュルとぶり返す。その間隔がどんどん狭くなり、今のオレはかなり危機的な状況にある。あたりは真昼の住宅街、コンビニもない。冷や汗と脂汗を流しながら視線をあちこちに飛ばすが、こうして見ると人目につかない場所というのはなかなかないものである。家と家とのすきまには監視カメラがあり、生垣は下が透けている。道では女や男やガキどもがうろついている。こいつらをみんな殺せば気持ちよくぶっぱなせるかもとオレは考えるが鎌を振り回す動きは危ない気もする。煩悶するオレに向かって冷たい相棒がどこでもいいだろう早くしろと唸る。早くしてほしけりゃテメーもせっせと場所探せよとオレは言い返す。そのとき空家らしい建物が目に入る。小さな庭は伸びすぎた生垣で囲まれ、丈の高い雑草が茂っている。ちゃんと見張っとけと相棒に言い置いてオレはいそいそと庭の茂みに身を隠す。思ったより草はまばらだ。というかオレがでかすぎる。オレは尻を出してできるだけ小さくしゃがみ、草木に同化しようと努める。そして無念無想…。そんなオレに、通りに立つ相棒が、飛段、お前ずいぶん忍んでいるな、と言う。まるで忍者みたいだぞ。独り言にしちゃ声がでかい。バカ野郎と怒鳴りたいのを我慢してじっと息をひそめていると、またもや相棒が、身を隠して奇襲をかけることをゲリラ戦法と呼ぶんだが知ってるか、などと言う。いかにも意地悪く愉快そうに。たまたま通りかかったババアが相棒を見てからちらりと空家の方に目を向ける。心の中で思いつく限りの罵詈雑言を相棒に投げつけながらオレはじっと耐える。今は忍ぶ時だ。いかにも、オレは忍者なのである。