ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

たそがれ時(ss)



強殺を見た。角都は犯人をとらえ、奪った金品を奪い返した。逃げる犯人は放っておいた。金にならない以上どうでもいいことだ。飛段は被害者のそばに膝をついた。初老の男の前頭部から刃物の柄が突き出し、後頭部から刃先が出ている。致命傷なのだが男の意識は明晰で話もする。自分の住まい、なぜここを通ったか、奪われて戻ってきた金品の性質、犯人に見覚えがあること、刺されたが痛みもないし特に不調がないこと。うん、そうか、へえ、と飛段は相槌を打つ。話すうち、男の目がくもり、明瞭だった意識が混濁し、やがて呼吸が止まる。最期をみとった飛段は顔を相棒に振り向け、死は救いなんだぜ、と告げる。金品を自分のふところに収める角都の背後の空は透明な黄色と青、その境目は色素の粒子が砂のように入り混じる。もはや角都も飛段も黒い影でしかない。