ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

暖かい闇(ss)



扉を鳴らして部屋に入った飛段は、真っ暗な室内を手探りで進んでベッドにたどり着くと、ぱたぱた毛布を叩いて部屋の主の存在を確かめ、その隣にごろりと横になった。つい先ほど休んだばかりの角都は音から飛段が寝惚けていることを知り、ムッとしながらも少し身をずらして場所を作った。蹴り出してもいいが、それからの面倒を考えると受け入れてしまった方が精神衛生上よろしい。飛段は満足そうに唸ると毛布にもぐりこみ、相棒に密着した。その心臓が激しく打っていることに角都は驚き、手を伸ばして飛段の頸動脈に触れた。いきなり急所に触られた飛段はびくりとしたが、自分の手を角都の手に重ねると、またおとなしくなった。鼓動が激しいぞ、どうした、と角都はすぐ近くにある飛段の耳に尋ねた。飛段は答えない。あっという間に寝入ってしまったらしい。唇がかすめた耳殻は火照っており、角都はそれをそっと食みながら、鳥の羽ばたきにも似た鼓動に聞き入っていた。