ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

業(ss)



角都の容赦なさに、飛段は舌を巻いた。大して小さくもないその村は瞬く間に炎と風に包まれ、抵抗もないまま壊滅しようとしていた。老いた女がもっと老いた男を支えて燃える家から逃げ出し、地に伏した。慈悲など望めないことを知りながら、それでもそのようにした二人を偽暗の雷遁が貫いた。なーにムキってんだァおい、と、金儲けの仕事を嫌って見物中の飛段が言う。こんなジジィやババァども、なにも今殺さなくたってひとりでに死ぬだろーが。依頼内容は皆殺しだ、と角都が答える。国の経済破綻を避けるためにこの村を切り捨てると大名が決めたのだ、生き残りがいたのでは意味がない。飛段が唾を吐く。胸糞わりー話だな、ええ?理由があればこんなことしていいのかよ。角都は答えず、飛段もそれ以上深入りしなかった。角都は金で請け負った仕事を完遂しようとしている、それだけのことだからである。ことが起きたのは、帰路、残金を受け取りに依頼者を訪れたときだった。村の殲滅を祝いに有力者たちが集う大広間の隣の小部屋で、金を勘定し終わった角都はアタッシュケースを閉めると、まるで握手を求めるように相手にさし出した腕を突然伸ばし、依頼主の首をつかんだ。じわじわと力を入れながら背後の相棒に低く話しかける。飛段、目的は手段を正当化するのかとお前は尋ねたな。答は否だ。殺しに関して言えば、俺たちが奪ったものと同じ命を再生できない限り、あれも、これも、いかなる殺しも取り返しのつかない行為だ。老人たちを全力で瞬殺していた角都が、時間をかけて相手を縊り殺していくのを見て、飛段が言う。殺すのそいつだけってのも変だろ、今日はオレまだ儀式してねーし隣でちょいとやってくるぜ。そして業を背負った二人により本日二回目の殺戮が行われる。