ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

新年2(ss)



若い相棒が大きな音を立てて俺の部屋の扉を開け、アケマシテオメデトーと言いながらずかずかと室内へ入ってきた。抑揚のなさに一瞬馬名かと思ったが、赤い顔をして酒瓶を下げている姿にああ正月なんだなと思い当る。そう言えば俺は月末の決算をしていたのだった。これを十二回繰り返すとまた正月が来るのだ。それだけのことに大騒ぎをして金とエネルギーを費やす者の気持ちが俺にはわからない。傍まで寄ってきた相棒は瓶から直に酒を飲むとそれをどんと机に置き、テメーも飲めよォ、といかにも酔っ払いらしく強要してきた。無視していると、なんだァ角都ちゃんは飲ませてあげないと飲めないんでちゅかー、と頭が悪そうに絡んでくる。酒臭い呼気に辟易として顔を上げるとちょうど相棒はあおった酒瓶を口から離し、頬をふくらまし唇を突き出した顔をこちらに寄せて来るところだった。ものすごく殴りたくなったが、そんなことをしたらあたり一面に酒が撒かれることになる。俺はマスクを下ろすと相棒の後頭部に手をかけて引き寄せ、口中の酒をジューッと音を立てて飲み干してから軽く額を叩いてやった。本当にバカな男だ。自分から仕掛けてきたくせに、ええっちょっと待てよマジで今の口移し?などと泡を食っている。一月一日になったぐらいのことで騒いでいたらキリがないだろう。お前は本物、俺は紛い物だが、お互い終わりのない身なのだから。