ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

都会の砂丘(ss)



狭いビジネスホテルの一室で、部屋の面積の大半を占めるこれまた狭い寝台に横になり、俺と壁に挟まれた窮屈な体勢で熟睡する相棒を眺めるうち、いつか仕事先で見た砂の丘陵地帯を思い出した。強い雨の中、小さな窓から弱々しくさしこむ灰色の光のせいかもしれない。上半身を仰向けに、下半身は横向きに柔らかくよじって横たわる相棒の皮膚は卵殻色と灰色に染まり、ゆるやかに起伏していて、その体温が伝わるほどの近さに頬を寄せて低い視点から眺めると、静かな体は本当に砂丘のようだ。俺の目と鼻と口は地平すれすれを漂い、植生を息で揺らし、水場を味わったあと、そっと裏返した大地のまろやかな二つの丘を堪能する。時間をかけて何度行きつ戻りつしても飽きることがない。小さな部屋の小さな寝台に広がる俺の国はかくも優しく淫らで美しい。