ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

オレ、サンタを見たぜ!赤い服きてたぜ!(ss)



角都が袖から紙を出して眺めている。それが飛段からの手紙であることを鬼鮫は知っていた。頼みもしないのに角都が見せてくれたからである。そのデレデレした様子を思い出し、あの人以前はあんなふうではなかったのに、と鬼鮫は考える。出会ったころの角都は物静かで得体が知れず、悪人から見ても恐ろしい男であった。それがどうだ、目を細めて手紙に見入る姿はまるで年相応の好々爺ではないか。角都さん、その手紙に書かれているの、あなたの分身のことなんでしょ、覚えてないなんて嘘つかないでくださいよ、あの面倒な任務の最中にあなたわざわざ分身して雨隠れに送りだしたじゃないですか。フン、俺はアジトに異変がないか様子を見に行かせただけだ、たまたまそれを見た奴がどう誤解しようと俺の知ったことではないわ。へえ、あんな状況で大事なチャクラを使うんですからよほどの事情だろうと思っていたんですが、まさかそんな理由だったとはね、いやー驚きましたねえ。角都は答えない。鬼鮫のからかいなどどうでも良いらしい。短い手紙を繰り返し読む緩んだ目元だけを見ればまあサンタに見えないこともないか、と鬼鮫は呆れ半分に考える。角都はこう見えて変化の術もなかなかうまいのだし、コートを裏返して着ていればなおのこと正体はわかるまい。