ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

渡す者(ss)

「掃除はクリスマスが終わってから」と「オレ、サンタを見たぜ!赤い服きてたぜ!」の間の話です。




サンタの話をしたときデイダラの奴は引いていた。隠したつもりだろうがバレバレだ。まだガキのくせにサンタを疑うとは悲しい野郎である。や、正直言えば前はオレもサンタは作り話だと思っていた。宗教のイベントのくせに神の匂いが全然しないし来ない年の方が多いから。けどそんなオレに相棒は反論した。宗教とサンタを強く結ぶ必要はない、たまたまその日にサンタが出歩いているだけだろうが。けど世界中を一晩で回るなんて無理じゃね?何も知らんのだな、サンタは世界中にごまんといるのだぞ、だがそれぞれの都合で来たり来なかったりすることはある、プレゼントをしたくても金のないサンタもいるし、道に迷って足止めを食うこともあるからな、だが喜びを渡そうと努力はしている、だから来なかったからと言ってサンタがいない理由にはならない、わかるか。相棒の話はたいてい難しくてチンプンカンプンなのだが、この話はまあまあわかった。だからオレは、おう、と応えて書きものをしている相棒の背中に寄りかかり、オレの信頼を伝えたのだ。信じてよかった、今オレの手の中にはサンタからのプレゼントがある。何が欲しいのかサンタに知らせておけと言われてオレが窓に挟んでおいた手紙をサンタは見たに違いない、ちゃんとオレの希望だった『角都からのラブレター』を届けてくれたのだ!まるで忍者のようにフッとあらわれたサンタは手紙をそっけなくぽいと投げてすぐに消えてしまったのだが、闇の中でも奴がでかい男で赤い服をきていることはわかった。ああオレのサンタを寄こしてくださってありがとうございますジャシン様、とオレはベッドの上で祈りを捧げる。イベント由来の宗教と教義が違うがきっとサンタは気にしないんじゃないだろうか。喜びを渡すのだと角都は言っていた、だから喜びを望む者がいる限りきっとサンタは誰のところにもやってくる、そうオレは思ったのである。