ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

むずがゆい(ss)



宿の部屋で飛段が角都に這い寄り、首の縫い目が痒いと訴えて額宛をほどく。書きものをしていた角都は筆を置き、相棒に向き直る。飛段の首は頑丈な中に甘い線を残し、若い樹木を思わせてすがすがしいが、布の下からあらわれた傷は赤く肉色でまるで恥部のように見える。両手指を相棒の首に這わせ、爪の先でかさぶたを剥がし、指の腹で縫い目をさすりながら、こんなみっともないものを人目にさらすなよ、と角都は言う。ねっとりした声と愛撫のような指の動きに飛段はぞくぞくとし、ついまぶたを閉じる。震える睫毛の陰からときおり見え隠れする白目を角都は凝視する。双方とも自分が悦楽に耽っていることを隠しながら、相手の淫猥さを貪欲に味わう。閨での行為よりも、なぜかうしろめたく思いつつ。