ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

望みと喜び(ss)



年末の行事に向け、角都は相棒をどう甘やかすか考えている。移動を続ける身のこと、与えることができるものは限られていて、角都の中では選択肢がほとんどない。宿か食い物か、どうもパッとせんな、と角都は歩きながら眉根を寄せる。と、ふいに飛段が道端へ行って何かを拾い上げ、ほれ、とそれを投げてよこす。ずしりと重く厚いそれは百両玉、今では紙幣に取って代わられ、あまり出回らなくなった貨幣だ。ずいぶん長くそこに落ちていたのだろう。今の市場では二倍ほどの額で取引されているそれを角都は手のひらではずませ、よくよく眺めてから隠しへ納める。拾いものが相棒の心にかなったことを見届けた飛段は満足そうににやりとする。上機嫌で枯葉を蹴飛ばす相棒の隣で角都は相変わらず思い悩んでいる。こいつを喜ばせるにはどうすればいいのだろう、と。