ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

花が降る夢(ss)



横になってからもずっと小言を垂れ流していた相棒がやっと黙ったので、そっちを見たら、目を閉じてじっとしていた。オレはとりあえず小便に立ち、戻ってきても奴が動いていないのでこれは寝たふりじゃねーなと考えた。月が明るくてぬるい風が気持ちよくて遠くでカエルがシャンシャン鳴いていて、オレは一向に眠くないんだが、相棒はオレよりもくたびれていたのだろう。昨日三人の賞金首とやりあったとき、オレは早々に胴体をちょん切られて役立たずになり、角都は一人で三人を屠らなきゃならなかったのだ。その後でノロマだとか間抜けだとか散々罵られたもんだからオレもつけつけと言い返した(でも体は縫いつけてもらった)。いつものことで、気遣いや礼の言葉などオレたちには無用だ。それにしても長い小言だった。黙ってりゃいい男なのによ、とオレは奴の寝顔をしげしげと観察し、匂いを嗅げるくらい顔を近づけてみた。オレの鼻息が当たっているはずだが奴はそれでも動かない。もうちょっと、もうちょっとと思いながらオレは眠る相棒の邪魔をしないよう、額やまぶた、鼻の先、耳、頬に、唇でそっと触れてみた。なんだか軽い花びらを食べているような気がした。相棒は気づかなかったに違いない。よく眠っていたから。