ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

痒いところに届くもの(ss)



野宿はたいてい暑すぎるか寒すぎる。寒けりゃ相棒とくっついていればいいんだが、暑いときはもうどうしようもない。今日はまさにそんなどうしようもない日で、もう夕暮れだっていうのに空気は湯のようだし風もないときてる。へばっているオレをよそに、角都はそのへんの草なんかを集めてきてやたら煙の出る焚火をする。虫よけだと言うけれど、どうにも熱いしけむいし服にもにおいが染みつくんでオレは好きじゃない。けむいけむいとしつこく文句を言っていたら、こっちの不機嫌がうつったのか角都が怒り始めた。蚊遣りが嫌なら風上へ行って好きなだけ虫に食われろと言ってオレを煙幕から追い出そうとする。けむいのも嫌だけど虫にたかられるのも嫌だ。出ていけ、やだね、と揉み合っているうちに本気でキレた角都は、腕からにゅんにゅん出てくるあれでオレの手首を縛り、そばにあった木の枝に蓑虫みたいに吊り下げた。当然オレは盛大にわめいた。そしたら角都はオレの腰帯をほどいてそれをオレの口にぐるぐる巻き、猿轡をしやがった。これで角都の問題は片付いたかもしれないけどオレの方はそうはいかない。煙からはずれたオレに蚊がたかってくる。奴らを追っ払おうとじたばたしていたら、今度は腰帯を解かれたズボンがずり落ちてくる。みるみる小さな虫どもが汗まみれのオレの肌にちょんちょんととまりだす。顔は上げっぱなしの腕で庇えるが、胸やら腹やらあいにくパンツを穿いていない下半身やらは守りようがない。オレはずいぶんがんばって暴れたが、蚊の奴らは平気な顔してゆっくりと食事をし、赤く膨らんで、また別の奴らと交代するのだった。いい加減刺されまくったころ、のんびり寝そべっていた角都がやっと立ちあがって近づいてきたので、オレはよだれだらけの腰布の奥からまたわめき声を上げた。早くおろせ!体中掻き毟るんだから!早くしろ!意味がわかってかわからいでか、角都は吊るされたオレのまわりをぐるりと歩くとコートをまくりあげ、痒くてむずむずする尻をぴしゃりと打った。んんんー!とオレはわめく。また一発。さっきのより強い。んーんーとオレはわめき続ける。変態くさくて自分でもどうかと思うが、恐ろしく気持ちがいい。次の打撃を待ち受ける尻を角都は荒く撫でると、オレの前にまわって股間の蚊を吹き飛ばし、ナニをつかんだ。硬い爪がいびつにしこった表面を引っかく。猿轡からよだれを流し、宙ぶらりんの身をよじって必死に刺激を求めるオレを眺めていた角都は、急に覆面を外すとオレの前に膝をつき、なんと虫に刺されてぼこぼこのナニを口に入れてきた。痒くてたまらない先端を奥歯で強く噛まれたオレは、あんまりな快感にくぐもった悲鳴を上げてしまう。まるで脳天から電撃を受けたようだ。目の前が白くなり、体中の筋肉がびくびくと激しく痙攣したあげく、泥のように力を失う。目の前の角都がぽかんとしたアホ面をさらしているが笑ってやる余裕すらない。我ながら死体のようにぶら下がるオレのそばに角都が焚火を転がしてくる。どうやら角都も本気を出すらしい。まあ奴がこれから何をやったってもうさっきみたいな快感はこないだろう、とぐんにゃりしながら高を括っていたオレは、ふちまでびっしりと蚊に食われた尻の穴に指を突きこまれて息を詰める。にわかには信じられないことだが、暑さもけむさも痒みも快感も、まだまだ先があるらしかった。