ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

行者(ss)



飛段のヘマのせいで高額の賞金首を取り逃がした。しかも制止を聞かずに深追いした飛段がワイヤートラップで体中を文字通り切り刻まれてしまったため、角都は時間をかけてばらばらの肉片をつながなければならなかった。無能な相棒と、肉片など捨て置いて賞金首を追うべきだったのにそうしなかった自分自身に腹を立て、むっつりと不機嫌になっている角都を、何を勘違いしたのか諸悪の根源である飛段が慰めようとする。角都よ、世の中思い通りにいかないこともたくさんあるけどな、そりゃ世の中が悪いんでもオメーが悪いんでもなくってまあ修行みてーなもんだ、忍者に修行はつきものだろ、だからそんなに不景気なツラすんなってェ。うるさい黙れ、と縫物をしつつ恐ろしい声で角都がうなるが飛段は平気な顔だ。どうせオレもオメーも死なないんだしよ、今日逃がしたアイツはまた今度つかまえりゃいいだろ、オレも手伝ってやるからのんびりいこうぜ、なー角都ゥ。誰のせいでこんなことになったと思っている、と大いに立腹している角都は相棒を八つ裂きにしたい衝動を抑えつけ(つなぐのは自分だ)、その代わりにきつく縫い目を引く。地面に敷かれた角都のコートの上で、まだ四肢を失ったままの飛段がイテテテとわめいて胴だけの体をくねらせると、そこは無事だった白くて丸い尻が無防備に角都を向いたり他を向いたりする。うっかりそんなものに欲情してしまわないよう、自他ともに短気を認めている角都は努めて荒々しく相棒を扱う。自覚のあるなしに関わらず修行は厳しい。よほどの極楽がその先になければ到底続けられるものではない。