ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

金に縁のない話(ss)

アズマ様からのリク「つちのこ(ぬこ)」による小話です。おかしいなあ助平な話になると思ったのにぜんぜんです(^_^;)アズマ様、楽しいリクをありがとうございました!



ああ、あの賞金首なら半月ぐらい前に出て行きましたぜ、と情報屋に言われて角都は落胆した。このところどうも金に縁がない。からっぽのアタッシュケースは軽くて手に馴染まず、間に合わせに石を入れてみたりしたが、ガタガタやかましく音がするのですぐに出してしまった。やはり札束にかなうものはないのである。わびしく野営地に戻った角都を迎えた飛段は対照的に上機嫌だ。肉をつかまえたと大威張りで焚火をつついている。なるほど、火の上に渡した串に肉のかたまりが通してある。足元でガサガサいうからよォ、鎌で草をかき回したら急にピョーンって飛び上がってきやがってよォ、シッポつかまえたらチーチー鳴きやがんの、丸々してたし飛び上がったりするんだから猫の仲間だと思うぜ、テメーが前に言ってたチーターかもしれねぇ、ま、どんなにすばしっこくたって本気のオレにゃかなわねえってことだなゲハハ。とらぬ狸の皮を惜しむ角都は鬱々としながら相棒の自慢話を聞き流し、渡された肉片をつまらなそうに咀嚼する。こうして二千万両の賞金がかけられた未確認動物の淡白な身は二人の不死者によって食べ尽くされ、残った骨もすでに火に投げ込まれた鱗だらけの皮と共に赤く焼け、白い煙となって天へ昇っていく。金も命も有限のものはすべて斯くの如し。