ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

酷寒の朝(ss)



立ち食いそばが出てくるのを待ちながら、飛段が、ゆうべ行った武器屋のおやじがオメーのこと褒めてたぜ、と言う。薬売りのヤローもこないだオメーのこと褒めてたっけ、奴ら見る目ねーよなァホント。もうもうと湯気を上げるどんぶりが飛段の前に、次いで角都の前に置かれる。角都が覆面を外し、飛段が唐辛子をふり、二人して箸を割る。誰もかれも俺を褒める、悪く言うのは貴様だけだ。そりゃ面と向かって悪口は言わねえだろ。そばをすすりこんだ角都がもぐもぐと、ごもっとも、と答える。さほどうまくすすれない飛段も相棒をまねて威勢よく音を立てる。真横からの朝日の中、厨房とどんぶりと二人の口から鰹節の匂いの湯気が白く流れ、しばらく途切れることがない。