ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

楽しい八つ当たり(ss)

さくま様からのリク「○○は貯めても使っても面白し」による小話です。正答はカネだそうですが、他に当てはまるものをなかなか見つけられず…。とりあえず下記のような感じで。さくま様、面白いリクをありがとうございました。




常用の筆がだめになったので、最初に入った店で安価な筆を買った角都は、そのすぐ隣の店先で更に安く売られている同じ品を見つけて己の軽率さを悔いた。前の店で試し書きをしてしまったから買ったものは返品できない。何軒か見てから決めるべきだった、と後悔を噛みしめる角都に飛段が、オイたかが二、三両ぐらいケチケチすんなよ、と余計なことを言ってくる。額の多少ではない、俺は浪費を惜しんでいるのだ!それに二、三両ではなくて四両だ!あーはいはいそりゃ大金だったなァ、とふざけた返答をする飛段を角都は横目で睨みつけ、仕置きについてねっちりと考えを巡らせる。今夜は劣悪なカプセルホテルに宿を取ろう、と角都は考える。頼りないカーテンで仕切られた狭い個室で相棒にありとあらゆる屈辱的なことをしてやろう、縛って口をふさげば周囲に気を使うこともない、気配に気づいて覗く奴がいれば金を取るまでだ、百両、いや千両でも安くはあるまい…。立ったまま妄想に耽っていた角都はふと思いついて二軒目の店に入り、筆をもう一本買い求める。あとスポイトと羽ぼうきと輪ゴムとガムテープも。たった四両でしぶい顔をしていた相棒の散財に飛段は驚き、ゲハハと笑いだす。なんだァテメーにしちゃ大盤振る舞いじゃねーか、何をおっぱじめるんだ角都よ。それらの文具が自分に使われることを知らない愚かな笑顔を、角都は先ほどと打って変わって好もしく眺める。妄想は金と似ている。脳内に貯めている間も楽しく、現実に使う時にはさらに楽しい。