ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

休日の猫ども(ss)

こあん様からのリク「猫舌」による小話です。こあん様、すてきなお題を本当にありがとうございました!



角都と飛段が訪れた温泉は川べりにあって水と混じり、いかにもぬるそうに見えたのだが、湧いてくる源泉は思いのほか熱かった。油断して入った角都は湧出口に足をついてすぐに飛び出し、ゆったりと肩までつかった相棒に大笑いされる羽目になる。じいさんにゃちょいと熱すぎたかもしれねえなァ。言いながら飛段は尻を浮かせ、ボコリと屁をひってさらに笑う。

温泉街の蕎麦屋に二人は入ったが、ぷんと香りの良い切蕎麦を飛段はうまくすすりこめない。こんなこともできないとはよほど肺活量がないのだな、と角都が嘲笑する。嫌気がさした飛段は自分の蕎麦を角都に押しつけ、温かい蕎麦を頼むが、今度は熱くて食べられない。真っ赤な頬をふくらまし、丼をふうふう吹く相棒の前で、角都は涼しい顔をして楊枝を使う。

宿の室内でことを終え、相棒が深く寝入ってから、角都はこっそりと自分の体液を手のひらに出してみる。もともとぬるいそれは外気に触れてすぐに冷たくなる。飛段の体内の方がよほど熱いと思うのだが、その飛段がこの体液を熱いと言うのはなぜだろう、と角都は考え、そのうちに冷えてしまった体を再びねぐらに埋める。むら雲の飛ぶ夜空の下、ナオナオ盛る猫二匹。