ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

間に合った(ss)



ぬるい風が桜の花びらを運ぶおぼろ月の下、向き合って横になり互いのデリケートな部分をいじりあっている最中に相棒が居眠りを始めたので、飛段は唖然とした。今日の移動はけっこうキツかったからくたびれているのはわかる。けれどそれならそもそもやらなければいいわけで、むこうから仕掛けてきたくせに途中で、しかも最弱の急所を他人に握られたまま寝こけるとはまことにだらしない。芯ができてきたとはいえまだ柔らかい部分を引っ張っても角都は目を覚まさず、そのくせ飛段の急所はしっかり握りしめて放そうとしない。なんと意地汚いのだろうと飛段はあきれ果て、同時に、この赤子のような男を全力で守らねば、とつらつら考える。角都の性質上、飛段以外にこれと組める者はいないだろうから。九十一歳と二十二歳。自分でも気づいていなかったが、湯隠れ忍者飛段は助けを求める寄る辺ないたましいを救うことに、いつの間にか成功していたのである。