ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

怨(ss)



死ぬ前の贄がわめくのをオレは聞いていた。もう殺したも同じだったからすっかり余裕をかましていたのである。お前を呪う、と贄は叫んでいた。お前はお前がもっとも大切にしているものを自分で壊してしまうだろう、取り返しのつかない損失を抱えて永遠に生きるがいい。言いたいことはそれだけかァ、とオレは嗤ってやり、ぶっすり心臓を貫いて相手の痛みを存分に味わった。執着と恐怖が痛みを彩る。いい贄だ。ジャシン様もお喜びになるだろう。プロに向かってケチな呪いを投げつけた愚かなババアの死骸をオレは川へ蹴り落とし、流れていくそれを見送った。ずいぶん歳を取ったババアだった、もう死んだっていいだろう、と思いながら。その後オレたちは木の葉とやりあい、二人ともやっつけられてしまったのだが、それからしばらくの間オレはひどく不安定になったものだった。角都はそれを穴のせいにした。体をばらされて生き埋めにされたら誰でもそうなる、と角都はバカにしたように言った。オレを慰めようとしたのかもしれない、そう言ったあとには必ず優しくしてくれたから。皮肉なことに奴の思惑に反してオレはますます不安になるのだった。オレはあのとき角都の心臓をそうと知らずにつぶしていた。つぶしながら高揚して楽しんでいた。オレは利口じゃないからいつかまた同じことをしでかすかもしれない。悔しいが、あのババアの呪いはちゃんと効いた。あれからずいぶん経った今でもオレはときどき不安に苛まれ、夜中に飛び起きたりゲロを吐いたりするのだが、その理由を未だに角都に言えずにいるのだ。