ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

同じことだろ(ss)



どうも人出が多いと思ったら縁結びの神社だという。詣でた芸能人が最近結婚したとかで、若い女が騒ぎながら賽銭を投げている。こう騒がしくては神とやらも大変だろうと思っていたら、隣にいたはずの相棒がいつの間にか拝殿前で柏手を打っていた。くだらんことに時間をかけるとはまったくバカな男だ。肩を揺らして戻ってきた相棒に、ずいぶん長かったな俺たち二人のことでも祈ってきたのか、と嫌味を言ってやると、奴は照れたようにシシシと笑った。こいつのこういう素直さは嫌いじゃない。何やら俺まで嬉しくなり、何を祈ったのかと改めて尋ねると、相棒は赤くなった鼻をこすりあげ、あのな、と内緒話のような声を出す。あのな、オレさ、オメーのことがまあそこそこ好きだからさ、いつかオメーをお嫁さんにもらえるようにってお願いしてきたぜ、へへ、へへ、へ。しかたがない。俺は奴の肩をつかむと拝殿にとって返し、若い女たちの前に割り込む。ほらお前もさっさと拝め、祈りをやりなおすんだ。えー、と騒ぐ相棒の頭を押さえて無理やり下げさせ、俺は、いつか俺たち二人が結婚できますように、と奴の代わりに唱えてやる。普段は絶対に入れない賽銭も投げる。わけわかんねーと相棒がぼやいているが知ったことではない。