ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

話を聞け(ss)

※第三者視点です。


簡単な伝言を持ってきただけなのに相手が留守だった。おれも暇じゃないのでそいつの連れの若造に話を託そうとしたが、若造がどうやっても伝言を覚えてくれない。あんたらがやった仕事の代金だが○×財団が直接あんたらに払うのはまずい、だから△社が代わりに払う、実際にカネを出すのは○×財団、けど渡すのは△社、わかったか、角都さんにちゃんと伝えられるか。わっかんねーなァ、そのへんの紙に書いてってくれよ。そんな紙を残したらやばいからおれが来たんだ、いいか、もう一回言うからよく聞け。そんなやりとりを何度も繰り返したが甲斐はなかった。そいつは決して伝言を覚えず、時間ばかりが過ぎ、しまいには本来の伝言相手が部屋に戻ってきた。うんざりしながらも救われた気になって言い飽きたセリフを繰り返したが、話しているわずかな間にも肝心の相手はおれの背後にいるさっきの若造を気にし、牛乳を冷蔵庫に入れてこいなどと命令したりしている。まあいい、言うべきことは言ったしこれでお役御免だ、と踵を返したおれの耳に、角都ゥあいつ誰だよ、知らん、というやりとりが届く。なんとまあ失礼で不愉快な奴らだろう、おれはちゃんと若造にも角都という奴にも名乗ったのに。二人とも興味のないことは聞いていなかったらしい。