ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

誰が読むわけでもないけれど(ss)

「寝不足が続いたある日のセリフ」の続きです。



相棒が疲弊していることを飛段は薄々知っていた。土地に詳しい忍集団を相手に昼夜を問わぬゲリラ戦を強いられた二人は、ここ数日間ほとんど睡眠を取っていない。ときおり耐えきれなくなった飛段が落ちたが、意識を取り戻すたび隣には臨戦態勢の角都がいた。しかし戦闘相手が片付いた今、さすがにそのスタミナも尽きたらしい。地べたに座り込んだまま動かない角都をのぞき込むと眠っていたので、飛段はどうしたものかと思案し、とりあえずその体をそろそろと仰向けに横たえた。時は正午に近く、角都の顔に当たる晴天の陽射しを遮ってやりたいと飛段は考えたが、適当なものがないため仕方なく自分の手巾を相棒の顔にかぶせた。いい加減空腹だったので、そのあたりに散乱している戦闘相手の残骸から兵糧丸や水をかき集めてきて半分を食し、残りの半分を角都が目覚めたときに食べられるようにそばに並べる。手際よく効率的にことを済ませたつもりだったが、あらためて眺めると揃えた物が弔いの道具立てのようで、飛段は弱って手をこすりあわせた。迷った末、角都に向けて地面に矢印を書き、大きく「しんでない」と書き添える。さらに少し考えて「しんでない」の上に「どっちも」を書きたした飛段はその出来栄えに大いに満足し、やっと相棒の隣に横になることができたのだった。