ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

落下(ss)



とてつもない高みから相棒と共に落下する夢を見た。相棒の表情がはっきり見えないことが気になり、落下しながら腕を伸ばして引き寄せると、静かに眠っているような顔をしている。夢だからな、と俺は変に醒めた頭で納得するが、漠然とした不安が胸中にわだかまる。本当に夢なのか?もし落下が現実だとしたら?とりあえず手は打っておこうと相棒を抱きこんで体を硬化し、背から落ちようとするが、なぜか姿勢がうまく定まらず相棒の体がどうしても下に向く。はじめは遠かった地表が近づいきて俺は焦る。これは俺が守らねばならないものだからだ。急ぎ風遁の印を切るが、慣れているはずの印がうまく結べず発動しない。もう間に合わないと悲しむ俺のそばで、穏やかな寝顔のまま相棒が言う。おい角都オレは不死身だぜ、大丈夫、お前のことはオレが守ってやる。飛段、と俺は呼んで相棒を抱きしめたが本当はしがみついていたのかもしれない。衝撃はいつまでも訪れず、俺はそのまま果てしなく相棒の中に墜落し続けた。