ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

かたなし(ss)



信条とする殺戮とやらのために前後も不明なほど血まみれになった相棒が、おい顔を洗いてぇから水遁頼むぜ、と言う。公共用水のような使い方をされるのは業腹だが、要望が受け入れられることを露ほども疑わない相棒がなりだけでかい幼子のように両手を差し出して水を待っているのを見ると、俺はついほだされて、疲労した身に鞭打って水遁を発動させてしまう。地怨虞もそうだ。これは滝隠れの里に伝わる禁術で必殺を誇る秘儀でもあるが、相棒からすれば奴の損なわれた体をつなぐための裁縫道具にすぎない。忍術は便利な日用品とは違うのだぞ、と説教しながら相棒の切り裂かれた背中を縫合していると、件の相棒がこちらを振り向いてぶつぶつ言う。オメーはいっつも口うるせえなあ、へっ、オメーが何を言おうとオレはオメーと組めてりゃ満足なんだ、オメーにそれがわからなくったってかまうもんか。俺は念を入れて眼を怒らせる。そうだ、俺は怨嗟にまみれた武人であり凶悪で恐ろしいS級犯罪者なのである。こんなくだらんたわごとで骨抜きになるわけにはいかないのだ。