ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

サッシのプレパラート(ss)

こあん様からの児戯シリーズリク(笑)「かごめ」による小話です。こあん様、いつも当方のイメージを広げてくださってありがとうございます。




元は集合住宅だったらしい安宿の部屋は厳しく冷えこんでいたが、年老いた主人が小さなストーブを運びこむととたんに暖かくなった。狭かったのである。宿に入ったら、と思い定めていた角都が飛段を追い回すうちに室温はどんどん上がり、限られた面積を巧みに逃げ回る飛段は動きながら服を脱ぎ捨て、しまいには全裸になった。部屋の隅に追い詰められた飛段が丸めた下着を角都の顔に投げつけて脇をすり抜けようとしたとき、それをつかまえた角都は、くつくつと笑いながら元気に動く汗ばんだ体を外に面したガラス戸に押しつけた。湯気で白く曇った冷たいガラスに背から尻をぺったりと貼りつけた飛段は、はっ、と笑うような息を漏らし、身をよじった。しばらく相棒の吐く息を呼吸していた角都が、いい眺めだぞ、と呟く。いい眺めって何が、と相手の視線を追おうとした飛段は、ぐいと体を裏返され、表に顔を向けさせられて初めて言葉の意味を悟る。平屋であるこの部屋の窓は小さな中庭に面しているが、そこに立っているのはなんと角都だ。背後を振り向こうとする飛段の頭は、しかし、大きな手でつかまれてガラスに押し当てられ、動かすことができない。外にいるのはきっと分身だ、と飛段は情報を整理しようとする。それともあれが本体なのだろうか、そうしたら背後にいるのが偽物か。本体か分身かわからない屋内の角都が飛段の体をさらに強く押しつけ、すでにたちあがっていた飛段の一部を腹部とガラスに挟んでつぶす。飛段は腕を突っ張り必要な空間を確保しようとするが果たせない。と、外の角都がガラスに近寄り、絵のように平らにひしゃげた飛段の体を指先でなぞった。乳首の部分はふざけたようにカリカリと爪で引っ掻く。ガラス越しだというのに刺激を視覚から感じ取ってしまった飛段は歯を食いしばる。てめ、この、変態ヤロー。きしむ声を聞きながら、今度は飛段の下腹部を覆うようにガラスに手のひらを当てる外の角都。じわり、とぬるい体温がガラスを隔てて飛段の一部に伝わってくる。不自由な体勢のままのぼりつめてしまった飛段が体液を出すと、今度は屋内の角都が飛段の背後を攻め始める。摩擦によってガラスと飛段の間に体液が薄く広がるさまを外の角都が観察する。せめてもの抵抗に目を閉じた飛段は、そのまま熱くてぬるくて冷たい快楽の中をうろうろとさまよう羽目になる。いい眺めだ、と誰かが言う。前の角都か後ろの角都か、それともまた別の角都か。いい眺めって何が、と飛段は尋ねるがどこからも答えはない。