ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

言えない(ss)



飛段は体を粗末に使う。角都はたびたび注意を促すが、飛段はまともにとりあおうとしない。今も飛段は相手の攻撃に生身をさらしており、もろい皮膚をあっという間に切り裂かれたところだ。骨まではやられていないらしく元気に跳ね回っているが、じきに手足の二、三本はちぎれるだろう。角都は飛段を縫いつなぐ作業が嫌いではない。けれどもその体に縫い目が痛々しく走るさまは見苦しいと思っている。あの術者に気をつけろ、油断すると死ぬぞ。だーからそれをオレに言うかよ角都。言葉すらひるがえすようにして飛段が相手の攻撃をかわすが、避けきれなかったらしく血潮が尾を引いて飛ぶ。不死をいいことに雑なことを、と角都は舌打ちをして自分の戦いを続行する。自分たちは穴だらけなのに飛段には自覚がない。角都は強いが死に得るし、飛段は死なないが無力化はされる。死ぬぞ、殺してやるぞ、という紋切り型の台詞が悪いのだろうか、と角都は考える。だが、お前が心配だなどと今さらどの面下げて言えようか。