ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

プラマイゼロ(ss)



天井の低い安宿の部屋で書きものをする角都の背に、のし、と寄りかかった飛段は、一時間だけだぞと言われて大急ぎで服を脱ぎ捨て、相棒の服もむしり取る。そうして相手にまたがり体の一部をクネクネさせて遊んでいると、突然角都が、一時間たった、と言って飛段を押しやり服を着始める。情報屋と約束があるのだという。前もって言われていたことだし確かに柱の時計もその時刻を指しているのだが、飛段は不満だ。ついさっきまたがったばかりなのにもう一時間経ったとは時計が進んでいるんじゃなかろうか。そう主張する飛段を尻目に角都はさっさと身支度を整えてアタッシュケースを持ち、出かけていってしまう。出がけの相棒に、貴様も服を着ろ、と言われたことがおもしろくない飛段はわざと全裸のままで尻と股と背中と頭をぼりぼり掻き、窓を開けて「あの人ハダカだ」と子どもに指をさされ、また窓を閉めて畳に寝転がり天井板を眺めて節穴を数え、そこで我慢しきれなくてとうとう時計に目をやる。角都が出ていってからまだ十分しか経っていない。時計のヤロー、と飛段は立腹する。さっきの分を律儀に遅らせなくたっていいじゃないか。進むなら角都が戻るまでずっと進んでいればいいものを。