ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

賛歌(ss)



角都が所有する質屋の片隅に焼き物の大きな狸が立っている。飛段は立ちどまってしげしげと狸を眺める。股から地面にデロリとぶら下がる袋。こりゃなんだ、と尋ねる飛段に質屋の店員が説明をする。さて、本人には明かさないが、強いし頭はいいし男ぶりも申し分ない、と飛段は相棒を高く買っている。角都は飛段が自慢できる数少ないものの一つなのだ。何か並はずれたものやことについて見聞きすると、飛段は「そりゃすげーな、けど角都はもっとすげーぜ」と考える。この反応は反射といってもいい。件の袋についても飛段はすぐさま角都の方がすごいと主張する。角都のタマはな、あっためるとどんどん大きくなってしまいにゃ角都が二人いるみてーになるんだぜ、寒い夜には布団代わりに広げたタマを腹にかけてくれたりもするぜ。とんでもないホラ話を店員はふむふむそうですかと聞き流す。まともに聞ける話ではないが無視して相手の怒りを買うのもよろしくない。飛段が怒れば角都が不機嫌になるからだ。そして角都はこと暴力に関しては全能に近い。袋の性能は誇大宣伝にしても。