ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

多分、自覚もない(ss)

※第三者視点です。



物騒な賞金稼ぎばかりの顧客の中でも特に凄腕の殺し屋が店にやってきたが、久しぶりに現れたその男が連れを同伴していたのでおれは少し驚いた。ここを訪れるときには常に一人で、ときに死体をぶら下げてくる、そんな男だったからである。深いチャクラはいかにも得体が知れず、きまぐれな怒りで身近な者を簡単に殺すという噂もあって、おれもそいつと取引をする際は注意深く振舞うように心がけていた。無法者を気取っているがおれも命は惜しい。今日もその男は深いチャクラをまとい、地を這うような声で各種情報の値を訊いてきた。その間連れの男は店内をうろつき、商売のカモフラージュに置いてある贋作の骨董品をいじって遊んでいたが、やがて退屈したのか腹が減っただの眠いだのとおれたちのやり取りに割って入るようになった。眉間にしわを寄せた殺し屋が、うるさい黙れ飛段、と唸る。静かにしろ、さもないと殺すぞ。なんだとテメー、殺せるもんなら殺してみやがれゆうべみたいによォ。突然の不穏な会話におれは慌て、やるなら外でやってくれ、と怒鳴る。店を荒らされては困るからだ。すると二人は顔を見合わせて、なぜかくつくつと笑いだす。おいおい角都聞いたかァ外でやれってよォ。フン、外でやるのが初めてというわけでもなかろう。そうは言ってもゆうべのアレはちょっとヤバくねえ?内でも外でも俺にとっては同じことだ。ハァー?テメーこそオレに殺されないようせいぜい気をつけた方がいいぜ。殺伐とした言葉と裏腹にまるで睦言のように話を続ける二人。ぽかんとしてそれを聞きながら、少なくとも一つのことをおれは学ぶ。一人では難しいことも二人ならばたやすくこなせるらしい。この殺し屋も人並みに声を立てて笑えるのだと今までおれは考えたこともなかった。