ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

教え(ss)




飛段が換金所の若い者と喧嘩を始めた。角都はしばらく放っておいたが、言い合う声がだんだん低く険呑になってきたので「うるさい黙れ」と一喝し、飛段を自分のもとへ呼んだ。足音荒く戻ってきた飛段はぶつぶつと喧嘩相手と角都を呪い、鬱屈した暗い目を相棒に向けてきた。なんで止めるんだよ、あのクソヤローを黙らせるいいチャンスだったんだぜ。くだらん挑発に乗るなバカ。バカはテメーだ、あんなもん屁でもねーっつーの。貴様の不死をあの男に証明したところで一文の得にもならん、それに切り落とした首を縫いつけるのは俺だろう、まあ少し黙って聞け。

昔の話をしてやろう。そいつは忍者学校へ通う前から見よう見まねで忍術を使いこなす早熟なガキだった。まわりにいた大人がそいつに目を留め、ある高名な忍者のもとへ修行に行かせることにした。里の中忍や上忍が混じる中でもそいつは際立った才能を見せた。抜きんでていたと言っていい。集まった面々はそいつを誉めたりけなしたりした。何を言われても気に留めなかったそいつだが、ある日同年代の子どもに、何でもできると言っても画鋲は飲めまい、とからかわれて、画鋲をひとつ飲んでしまった。他の子どもからそれを聞いた高名な忍者はそのガキの腹に手を当て、中の画鋲を感じ取るとこう言った。画鋲は自然に出て来るだろう、お前は家へ帰れ、もうここには来るな、と。

えっそれで終わりィ?と飛段が間抜けな声を上げたが、角都は黙って金を数え続けた。