ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

信仰(ss)



角都の硬化した体はどんな衝撃にも耐えられる。けど火遁を続けざまに浴びたりすれば皮膚は焼け爛れてしまう。真っ黒こげになった角都がロボットみたいに歩いてくるのを見たとき、オレは奴がふざけているのかと思った。だって片手にはちゃんと賞金首をぶらさげていたから。けれども奴が動くたびに炭化した肉がぼろぼろ崩れるのを見れば笑いごとじゃないことはすぐわかる。オレは角都を抱きかかえて水場を探し、そこに奴を浸けると、いつもは絶対にしないことだが賞金首を換金所まで運んで換金した。そうしないと角都がおとなしくならなかったのである。コートの下に重たいカネの包みを背負い、効くのかどうかわからない火傷の薬を買い込んで翌朝その場所へ戻ったオレは、オレが浸けたまんまの格好で水の中に横になっている角都を見てぞっとした。早朝の青い空気の中、角都の背中は空っぽだし体は相変わらず真っ黒で、まるで死んだ地怨虞の一人みたいに見えた。オレは角都を水から引っぱり出すと脱いだコートの上に寝かせ、ぬるぬるする薬を冷えた全身に塗った。塗りながら、こんな思いをしなくていいようにこいつと組んだのにうまくいかねえな、などと考えていた。そしたら角都が、コンビを解消するか、と言ったので驚いた。正直角都がしゃべれるとは思っていなかったし、自分が考えていたこととつながるセリフだったからだ。なんだよテメーオレを殺すんじゃなかったのかよと言ったら、角都は笑うような音を立てて息を吐き、焼け焦げた指でオレの手首にさわって、好きにしろ、と言った。お前はお前の、好きに、するがいい、飛段。水の中みたいな青い空気の中で、許すような声で、角都はそんなことを言った。カネの包みを背負ったまま薬の瓶を持って跪くオレに、そんなことを。