ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

魔法のポケット(ss)



飛段は上機嫌である。自分は天才だ、名案を考えついた、と悦に入っている。飛段の相棒でひそかな思い人でもある角都は不愛想だが金には貪欲だ。二人で道を歩いているとき、飛段は隠しから取り出した十両玉を指先で回して見せ、なあ小銭稼ぎをしねえか、と角都を誘う。オレにチューしろよ、口にだぞ、そしたら十両くれてやるぜ。角都は表情の読めない顔で相棒を眺めるが、指で覆面を引き下ろすと、ていねいに要望に応える。もちろん十両玉も取る。ちょろいもんだぜ、と飛段は唇の端で笑う。サービスが欲しくなればまた隠しから十両玉を取り出す。上首尾を喜ぶあまり、いくら使っても尽きない十両玉に疑問を抱くこともない。