ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

なぜか渋面に戻る(ss)



角都が難しい顔で帳面に向かっている。腹を掻き掻きテレビを見ながら、どっちもやりたいことをやっているだけなのに奴の方がりっぱに見えるのはどうしたことだろうとオレは考えた。たぶん顔つきが問題なのだ。組んでずいぶんたつが、「大喜び」「大はしゃぎ」「ウホウホラッキー」のような、いわゆるアホ面の角都を見たことがない。コートのポケットにあった飴玉を舐めようとしていたオレは、ふとその薄青色の飴を角都に向かって投げてみる。喜ぶ顔をちょこっと拝めるかと思ったのに、座卓の上で弾んで畳に落ちた飴を角都は見もしない。なんだ。ハッカ飴好きだろ、やるよ。落ちて汚れた飴など食えるか、舐めてきれいにしてから寄こせ。ええーとオレは驚くが、奴が早くしろと急かすもんだから拾った飴を口に入れる。ころころと飴を舐めるオレの前で角都は覆面を外して待機する。心なしか角都の渋面がほころんでいるような気がする。そんなにハッカ飴が好きなのか。そのときオレはポケットにもう一つ飴が入っていたことを思いだし、意気揚々とそれを取り出して角都に握らせてやる。ほーらきれいなハッカ飴だぜ、喜ぶ顔を見せてくれよ角都!