ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ノイズ(ss)



雲の上を転がる大樽のように雷が鳴り響く。遅れてボトボトと大粒の雨。降る寸前にたどり着いた洞窟の口から、飛段が飽きずに暗い空を見上げている。生ぬるい季節に火を焚くこともなく、俺も苔むした岩に腰をおろして空を見る。馬の群れが走り抜ける音を立てて雨がみるみる激しくなる。暗さが増す中で、黙っていても埋められていく密度の高い空気が心地よく、俺は満ち足りる。と、轟く雷鳴と空を切り取る稲光を楽しんでいるようだった飛段が、ざりざりと音を立てて傍に寄って来た。俺のコートの背を捲りあげ、失われた心臓の跡を指で探っている。角都、やられた後にオレが呼んだら何か言えよな、返事なかったら死んだかと思うじゃねーか、テメーが簡単に死なねぇのは知ってるが、あんま心配かけんなよ、な。俺は黙って耳をすます。雷鳴も雨音も他の雑音も聞き洩らしたくなかったので。