ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

腕が動くものなら抱いて撫でてやったのだが(ss)

さくま様のリク6「ピンに刺された虫と飛段」です。昆虫標本のイメージで。



オレの体はばらばらに散らばっていた。元の場所から動いていないのは仕込杖で地面に留められた胸の部分ぐらいじゃないだろうか。あとはもう何がどこにあるか見当もつかない。角都の癇癪に慣れているオレでもここまでひどくやられるのは珍しい。確かにオレたちは言い争っていた、けどそんなの毎日のことだ。たまたま今日の角都は虫の居所が悪かったんだろう。奴は儀式中のオレを散々に殴って踏みつけ、まず腕を、次に脚を引きちぎり、腹を裂いて内臓をばらまき、最後に頭をねじ切って投げ捨てた。目をつぶされたので今オレたち二人がどんな状況になっているのかよくわからないんだが、どうやら怒りがおさまった角都はあたりを歩き回ってオレの破片を拾い集めているらしかった。やがて、がさり、がさりとオレの頭の近くを足音が行き過ぎるが、なかなか見つけてもらえない。バーカここだよ早く来いよ角都!と、口を裂かれて歯を叩き折られた生首のオレがじりじりと待っていると、しばらくあたりをうろついていた相棒の足音が止まり、腰を下ろしたのか膝をついたのかそれとも拳を打ち下ろしたような、どん、と地を打つ音がして、次いで、おおお、おお、と声がおめいた。いや、あんな軋むような割れたものは声じゃなくて音というべきかもしれない、角都はその体からひどく悲しげな音を出していたのだ。おれはだめだ、こんなことではだめだ、まるでこわすためにつくっているみたいじゃないか、あいしている、けれどそれがなにになるというんだ。壊れた昆虫標本のかけらみたいなオレは、ただその悲痛な音を聴いていることしかできなかった。オレの体で機能が残っていたのは残念なことに耳だけだったので。