ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

不一致と一致(ss)



旧街道沿いのつぶれたラブホテルの一室で相棒の腰をつかむと、相手は嫌がってそれを払いのけようとした。もうマジでかんべんしろ、殺す気かよ。貴様がそれを言うか飛段。廃墟に入りこんだ時は相棒の方がテンションが高かったのだ。おいおいとんでもねー部屋だな姫ベッドに鏡張りの天井なんてマジありえなくねェ?ただ休むことだけを目的としていた俺を誘ったのも飛段だった。街灯のむき出しの光に照らされて夜だというのに変に明るい部屋の中、雨に濡れたコートをカーテンレールにぶら下げ、埃だらけのベッドカバーを慎重に外した俺は、サンダルのままベッドに上がろうとして飛段に止められた。靴は脱げよ、とこいつは言った。そうしてじっとこちらの目を見てニヤリと笑ったのだ。だからそういうことになったのだが、最初から飛ばし過ぎる飛段はじきに威勢のよさを失い、一方こちらはそのころになって興が乗ってくるというすれ違いが今回も生じた。こうなると体力勝負である。スプリングがいかれて真ん中が窪んでいるかび臭いベッドは蟻地獄のようで、表面を引っかいて逃げようとする飛段はそのたびに俺によって中心へ引き戻される。何度かそれを繰り返すとさすがの飛段も諦め、荒い息をつきながら俺の腕に収まって、わーったよ負けたよ好きにしろよとぼやいた。行為に持ち込むのは簡単だが、ブツブツぼやきながら俺の胸の縫い目をいじる相棒の手をどかすのが何やら惜しく、ただその体を抱いて尻を撫でていると、しばらくして飛段が、しねえの、と訊いてきた。そうだな。ふーん。雨音の中、相変わらず俺の縫い目をいじり続ける相棒は満ち足りて見え、それを眺めている俺もなんだかとても満足してしまう。不本意ながら。