ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

自業自得(ss)

こあん様からのリク「肩透かし」による小話です。何だか思いのほか重い話になってしまいました^^;いつも構ってくださってありがとうございます。感謝です♪



自分にやらせろと飛段が割り込んだせいでほぼ捕えかけていた大事な賞金首を逃がしてしまった。俺の怒りをよそに飛段は涼しい顔で、金のための殺しなんて罪を重ねずに済んで良かったじゃねーか、などとうそぶく。なんだよそのメンドくせー目はよォ、殴りたきゃ殴ればいーだろ。反省の色がまったくない相棒に呆れ果て、俺は飛段を無視することにした。それからの飛段の行いは正しく悪魔のようだったが、俺はとうとう心の平安を得たのである。飛段の口汚い悪態を聞き流しながら俺は自分のペースで歩き、自分のことだけを考え、食料も自分の分のみ調達した。荒れ狂っていた飛段はそのうちにむっつりとおとなしくなり、ときおり偶然のようにこちらとの距離を詰めたが、そのたびに俺は身をかわし、いっさい接触を持たなかった。このような大人げない仕打ちを繰り返し、相棒のしょげる様子を密かに堪能していた俺は、ある朝安宿の部屋から相棒の姿が消えていることに気がつき、ひどくうろたえた。ずっと相手がいないかのように振舞ってきたが、いないふりをするのと本当にいないのでは大違いである。自分はやりすぎたのかもしれない。寄り添うそぶりを見せる相棒を冷たくあしらったのは昨夜のことだった。あのあと飛段は表に出て行ったようだったが、自分はその戻りを確認しないまま寝てしまった。奴はそのまま帰ってこなかったのか?今どこにいるのか、まさか誰かと一緒では?ちゃんと戻ってくるのだろうか、俺のもとに?綿密に立てておいたその日の予定などどうでもよくなってしまった俺は自分のものばかり乱れた布団の上に座り込み、茫然とあたりを見回した。自分のコートとアタッシュケース、机の上の帳簿。なんとまあ空っぽな部屋だろう。早く探しに行かなくては、とはやる心を、いやもう何をするにも遅すぎる、と脳が叱る。でもどこかで迷子になって俺が迎えに行くのを待っているとしたら。今さら何を言う貴様が追い出したから出て行ったのだ、自分をごまかすな馬鹿者。冷徹な脳に言い負かされた俺は上げかけていた腰を落として両手に顔を埋め、怒りにまかせた大声で、やけになったような投げやりな声で、絞るような低い声で、自分を認めようとしない俺に向かって懸命に自分を殴れと訴えていた相棒の声を思い出す。殴りたきゃ殴れ、それで気が済むなら好きなだけ殴れよ。後悔で喉の奥がふさがる。殴ることは触れることだったのだ。そんな簡単なことにどうして俺は気づかなかったのだろう。