ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

寂しいか(ss)



はー、はー、と飛段が息を荒げてのしかかってくる。俺は奴の勢いを削ごうと丸い肩を押し上げる。奴はその俺の手をつかんで外そうとしながらもどかしそうに首だけ垂れ下がらせて、うっあっ、と喉を鳴らす。喉仏が目の前で上下する。奴のいきり立ったものが俺のそれを押しつぶす強さでこすりつけられる。下を向いた顔は赤く染まり、鮒のように開いた口からつるりと唾液が垂れ落ちる。入れたいのでも入れられたいのでもなく、奴はただむしゃぶりつきたいだけなのだ。ひとが内包する闇の深さは他人にははかりようもないのだが、俺は開いた傷口のような目を覗きこんで安っぽい代用品であるこの身を見せびらかし、底知れぬものと対峙するふりをする。さあ来い、共に永遠に生きる者を手に入れたいのなら来い、本気で頑張れば、ひょっとしたらお前のものになるかもしれないぞ。あがぁ、と飛段がわめく。言葉が生まれる前の人類はこのようだったのかもしれない。伸ばされる腕と指、絡みつく脚。水のような唾液が俺の目に流れ込む。飛段、すまない、俺はとうとうお前の望む者になってやることはできなかった。