ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

デリカシーに欠ける人々(ss)



ドアの向こうで、相棒に部屋を叩きだされた、と飛段が訴えている。痴話喧嘩なのはわかっている。この二人はいつもそう。分かちようがないほど絡み合っているくせに、自分たちはそれがわかっていない厄介な人たち。わたしは知らないふりをしようかと思った。指先に神経を集中してペインの会陰をなぞっていたところだったのである。けれどもペインが飛段を気にして手錠を外してくれと泣き声を出すので、さすがのわたしも無視を貫くことを諦め、ドアを薄く開けて飛段の問題を聞くことにする。あいつひどいんだぜ小南ちゃん、本なんか読んでるから暇だろうと思ってハダカになって膝に乗ってやったら力いっぱい殴りやがった、オレはあいつのためを思ってやってやったのによォ。廊下の飛段は全裸にコートだけを羽織り、頬を青黒く腫らして涙目だ。男はどうしてすぐに泣くのだろう、しかも計算ではなく泣くから始末が悪い。わたしは自分が穿いていた膝上までの黒ストッキングを脱いで飛段に渡し、アドバイスを与える。飛段、男は急かされるのを嫌い、脱がせるのを好む生き物、だから脱がせたくなるものを身につけなさい、コートの下にストッキングを穿き、眩しいから眠れないと言って額宛で目隠しをして角都のベッドに横になって休むといい、コートの前は少し開けておくように、それでもうまくいかなければまた来なさい、わかったわね。そして飛段は去り、わたしは再びデリケートな楽しみに戻る。何度も指を滑らせ、やっと見つけたポイントを押してやると、ペインは四つん這いのままもじもじと尻を振りつつ、角都ももう少し飛段に甘くしてやれば良いのだが、などとリーダーの口調で仲間を案じる。こんなときに、と気分を害したわたしは平手でぴしゃりと袋の裏を叩き、相手に悲鳴を上げさせる。ああペイン、あなたって本当に救いようのないひと。