ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

春のうららの(ss)



川べりには菜の花がどこまでも咲き、羽虫が飛び回り、田畑を耕す人の後ろにミミズを探すカラスがついて歩いている。うららかな日和なのだがあたりには強い異臭が漂う。掘り起こされた土には肥料がふんだんに撒かれているのだが、糞便をもとに作られたそれが臭うのだ。ときおり強い風が吹くと、臭いを放つ土ぼこりが白いかたまりとなって押し寄せる。そのたびに飛段は相棒の陰へ隠れて土ぼこりを避ける。風がやむとさりげなく隣へ戻って共に歩く。卑怯者のようでうしろめたく、できれば角都には自分の行為に気づいてほしくないと飛段は思っている。いやいやオレの方がでかけりゃ喜んで盾になってやるけどよォ、などと頭の中で言い訳をしながら飛段はちらりと無表情な相棒を見る。自分の考えにかまけていて、風が吹くたびに飛段が隠れやすいよう角都が体勢を変えていることには気づいていない。