ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

光る道(ss)



夏の長い日が暮れてあたりは暗く、だが、まだかすかに日の名残が空に宿り、地上の川がそれを映して金の帯のように輝いていた。一日中歩き通して不平も出ないほどくたびれ果てていた飛段は、段差だらけの荒れた道を足を引きずりながら歩いていた。常になく静かな相棒に、角都は川上の小さな灯りを指し示し、あれが今夜の宿だ、と告げる。おー、と返すのがやっとの相棒をどう思ったのか、カクズは急に飛段の手をつかむと草やぶを踏み分けて川辺へ降り、水面へ歩み出る。飛段も慌ててチャクラを練るが、いつもはもどかしい調整が今日はあっさりと決まり、水面は安定した平らな地のように飛段の重さを受け止める。のろまな奴め、と角都が嘲るような声を出すが、しっかりと握った手は離さない。貴様のペースでは真夜中になってもたどりつけないだろうから近道をするとしよう、もたもたするな、さっさと歩け。ブゥン、と手から伝わるチャクラに助けられながら飛段も足を踏みだす。バカにされたことに対して何か軽口を返したかったのだが、何やら胸がいっぱいでしゃべることができなかった。今見ている景色、聞いている音、匂い、空腹、疲労、そのほか体に伝わる感触すべてが大切な思い出になるだろうということに気づいていたのである。