ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ときめき(ss)



立ち寄った紙屋のおかみが、今日はそういう日だから、と品物に菓子を添えてよこした。角都はいかにも安物のチョコレートキャラメルを断ろうとしたが、隣からの熱心な視線を感じてそれを受け取り、そのまま隣の相棒へ手渡した。すると飛段は包み紙をむいた大粒のキャラメルを両手の親指と人差し指でつまみ、二つにねじ切って、片方を角都へ差し出した。今日はそういう日なんだろ。そう言ってほほえんでいる。半欠けのキャラメルをつい受け取ってしまった角都は言うべき言葉を探す。礼を言う気はさらさらないが、死ね、とか、バカめ、と返すのも違う気がする。指の跡がくっきりとついたキャラメル、やけに男前にほほえむ相棒、怪訝な顔で自分たちをみている紙屋のおかみ。珍しく角都は途方に暮れる。何を言うべきか考えるうちに、考えすぎて恋をしてしまったことに気がついたのだ。